病院の４人部屋に夫は入院しているが、同じ部屋に夏に入院
した時に一緒だった人がいる。
私よりも１０歳若く、病名は夫と同じだ。

その人を見ていると、夫がたどった道を歩いているようで
辛い。

奥さんと少し話をしたが、もう一月持つかどうかと主治医
に言われたとか・・。
なんということだろう。

夫が入院した時にはまだ元気で、トイレにも車椅子で行けたのに。

日々、弱っていくのが分かるから見ていて辛い。

夫だって何時急変するか分からないが、その人ほどではない
ような気がする。

奥さんにもなんと言って言葉をかけたら良いのか分からない。
「頑張って」なんてとてもいえない。

昨日は同じ部屋の７１歳になる方のお母さんが見舞いに
来ていた。
９０歳を超えているとか。

お母さんが帰られた後、その方は声を上げて泣いていた。
親より早く逝くかも知れない辛さ。

病院にいると、辛いのは自分だけではないと言うのが
身にしみて分かる。

入院して２０日、まだ点滴は外れない。

血圧、酸素の値も安定し、食欲も出てきたのに元気が無い。

声を掛ければ返事はするが、夫から話しかけることはまず
無い。

毎日病院に行くが、何もする事が無い。
家にいても、何もする気が起こらないから病院に行く。

食事は介助がいるので昼と、夜は食べさせるが、それ以外は
看護士がやってくれる。

何にもしていないのに疲れている。

昨日は下まぶたのあたりがピクピク痙攣していた。

今は部屋が変わったが、隣のベッドにいたおじいさんは夕べ
亡くなったそうだ。

病院も入れ替わりが激しい。

昨日同じ部屋だった人が、今日は他の部屋に変わり、ベッドが
空いていた。

病院で夫に付き添っていても、うとうとしているばかりで
こちらが声を掛ければ何とか返ってくるけど、ほとんど
何も言わない。

気分転換に談話室などにいき窓の外を見る。
病室は8階なので眺めはすばらしい。

時々、同じように付き添っている奥さんたちと
話をしたりする。

皆似たような病気、症状、年齢だ。

会社を定年してこれからだと言う時の発病。

仕事一筋に会社で働き、家族を養ってきたのに。

夫の勤めていた会社の退職者の平均寿命が62歳ときいた
ことがある。

それは大げさ話かも知れないが、夫の入院している階は
8割がた男性の患者だ。
それも夫の年に近い人が多い。

昨日話した奥さんは年齢も夫と同じで病気も同じ。

全く自覚症状が無かったので、見つかった時はすでに末期だという。
夫も同じだ。

今日看護士が「ブタコさんのご主人はステキな方だったのですか？」
と聞いた。

私が毎日、付き添っているから仲のいい二人だと思って言ったの
だろうか。

私に今出来る事は、毎日夫の側にいる事。

もう思い出を語ることさえ無いのだ。

15日の朝病院から「ご主人の状態が良くないので早く病院に来てください」
と電話があった。

急いで病院に行くと血圧が低いので、血圧をあげる点滴をするという。
いったん取れた酸素もまたマスクをはめられていた。

血圧は高いほうが７８～９０、本人もきつそうだった。

子供たちに知らせた方が良いのか迷ったが、3人とも遠方なので
いざと言う時は覚悟をするようにと連絡をした。
これからもこういうことが多々起こると思うが、その度に出かけてくる
のも大変だから。

ましてや、長男は外国だ。

15日は病院に泊まったが、血圧も９０以上と落ち着いていた。

17日は夫の65歳の誕生日だった。
嫁が花を持ってきてくれた。
可愛いアレンジフラワーだ。

朝から酸素も外れて楽になったようだ。

血圧の点滴も少しづつ量を下げて、今日は点滴も外された。

しかし、今日は一日うとうととしていた。
食事は何とか5割以上は食べてくれたが。

退院はもう少し時間が掛かるかも知れない。

夫が入院して今日で11日目。

一昨日はものすごくハイで、一人で喋りまくっていたが、昨日
今日は私が声を掛ければ返事はするが、静かだ。

うとうと寝ているわけでもない。

調子が悪い様でもなく、食欲も出てきて病院の食事も、おかずは
8割方食べれるようになってきた。

後は肺に溜まった水を抜いているが、それも来週の月曜日まで
だと言われたので、その後調子がよければ退院できるのでは
と思っている。

退院してからは今までのように、買い物などで家を空けることが
難しくなるかも知れない。

発作が何時起きるか分からないからだ。

今は、夜家に帰っても何もやる気が起こらなくて、ダラダラと
過ごしてしまう。

退院しても多分何も出来ないだろう。

夫が救急社で運ばれた日、受付で手続きをしていると
Ｙさんを見かけた。
「Ｙさん。お元気？」と声を掛けた。
電話で話をしたことはあるが、会うのは夏の入院以来か。

今年に入って入院されたと聞いていたので「ご主人の具合はどう？」
と聞くと「亡くなったのよ」といわれた。
「何時？」
「２７日」
「私、２８日が診察日だったから、寄ろうと思ってたのよ。
２７日に亡くなってたの。」
「そうなのいろいろ大変だったのよ」

２８日は夫が水を抜くであろうと思い、その間にお見舞いに行こうと
思っていた。
実際、水は抜いたがそんな時間は取れなくて、いけなかったのだ。

「私は今日から入院なの。今救急車で運ばれたところ」

Ｙさんのご主人もなかなか言う事を聞いてくれなくて
大変だったらしい。

今年に入って入院した時は、覚悟をするようにといわれたとか。
「また電話するね」「うん。私もするね」

人事ではないのだ。

夫だって何時、急変するかも知れない。

幸い、一昨日あたりから、食欲も出てきた。

部屋も個室から４人部屋に変わった。
夜の付き添いをしなくて良い分、楽になった。

昼間、病院に行っても、完全看護だからなにもすることはない。

会話もあまり出来ないからそばにいる事ぐらいしか出来ないが。

２月４日に夫が入院した。
昼過ぎにお向いのおばさんが夫の様子を見に来て
夫のベッドの側で話をしていて、夫も聞いていたのだが
突然目をむいてワナワナと震えだした。
「おとうさん？」と声を掛けても反応が無い。

すぐ、看護士に電話をして指示をきいたら「すぐ救急車
をよんで病院に行くように」と言われた。

１１９に電話する。状態を話すと緊急の事態と判断され、消防車
も一緒に来るという。

病院について検査を受け脳の腫瘍から出血したといわれ、入院
となった。
入院してからも昼間に２回、夜間に２回痙攣を起こした。

痙攣を抑える点滴を受け、あくる日からは痙攣は起きなくなったが
昨日、今日当たりは意味不明な事を言う回数が多くなった。
幻覚も見えるらしく「誰かがいる」とか「蚊の大群が天井にいる」
などという。

痛い苦しいと言わない分、とても助かるがこうしていろんな
事が分からなくなっていくのかと思うとやりきれない。

完全看護の病院だが、夫にはもうナースコールを押すことが出来ない。
夜間は泊まって欲しいという事で私も病院に泊まっている。

今日は娘が見舞いに来たので、病院に訳を話し家に帰ってきた。

夫の状態は決して良くないが、少し落ち着いて元気も出てきた。

主治医の話では、後は夫の生命力次第だとか。
なら、大丈夫だと思う。

心配してあれこれ聞くと「うるさい」と言う返事が返ってくるからだ。
減らず口がたたけるうちは大丈夫だ。

夫が、「おい、わしの名前はなんと言うんだったっけ？」
と言った。
「え～っ、忘れちゃったの？」
「うん、分からん」
「ヨシヒロって言うんだよ、分かる？」
「あ～そうだった」
「じゃぁ、私は？」
「お前はブタコだよ。いつもブタコ～ブタコ～って呼んでるから
分かるよ」
「じゃぁ子供の名前は？」
「ヨシカズとあとだれだっけ？」
まじ～！

最近、意味不明なことを言うことが多いが、自分の名前や
子供の名前まで忘れるなんて。

そのうち、「どなたか分かりませんがいつもすみませんねぇ」
などと言い出すのでは。

今日は３週間に１度の診察の日だ。

１０時５０分に介護タクシーを予約したつもりでいたら、２０分も
早く来た。
私が間違えて予約したのだろう。（ちょっと弱気）

病院に着くと先ずレントゲン室にいく。
その後受付を済ませ、何時ものように治療室のベッドに寝かせて
もらい、診察の時間まで待つ。

今日は少し早かったが、先生がベッドに診察に来てくれたのも早かった。

「どうですか？痛いところはありませんか？」
痛みが無いというのは本当に有難い。

「また、水を抜きますね」
麻酔をしたとはいえ、針を刺す瞬間は痛そうだ。
今日は１．２リットル抜いた。

水が溜まりだすとどんどん溜まるようだ。
口からとった栄養が水に吸収されて、痩せていく人もあるという。

最近は、食欲も少しだが増えて、言うことも相変わらず負けん気が強い。

丁々発止と遣り合っているうちは元気な証拠だ。

昨日、あるサイトで気になった人が居たので、メールを送ったら
返事を頂いた。

読んでいて涙が止まらなくなった。
その方も３年前にご主人を癌でなくされたとか。

好きなことも、まるでもう一人の私が居るみたいに良く似ている。

ご主人の闘病中はさぞかし辛い日々だった事だろう。

心にぽっかり穴が開いたようだと。

強がりばかり言っている私は、ほんとはどうなってしまうのだろう。

このところ、夫の食欲も少し増して元気だが、状態は決して
良くない。

ネットでアボガド、マグロ丼の作り方を見つけた。

丁度、マグロ丼が食べたいと思っていたので、作ってみることにした。

材料の中にコチュジャンが入っている。
これは中華味？
私は和風にした。私の悪いところはレシピ通り作らないこと。

アボガドとマグロはさいの目に切、タレの中に漬け込む。
タレは、だしつゆとしょうゆ、みりんを合わせたものにした。

３０分くらい漬け込んで、ご飯のうえに大葉の千切りをたっぷり載せ
アボガドとマグロを載せた。
仕上げに刻み海苔もたっぷり載せる。

アボガド、美味しい！
今までのマグロ丼だとマグロが沢山いるけど、アボガドが入るから
半分で済む。

アボガドの大きな種、何かに使えないかしら。

最近寝つきが悪いので睡眠導入剤を飲んで寝るようになった。

アレルギーのかゆみ止めの薬も、毎日飲まないと痒くてたまらない。

昨夜はアレルギーと睡眠薬を飲んだつもりが、１時間半たっても
寝付けない。

とうとう薬も効かなくなったかとショックだったが、再度睡眠薬を
半分飲もうと台所に行ったら、なんと寝る前に飲んだのはアレルギー
の薬を睡眠薬と間違えて、２錠飲んでいたのだった。
相変わらずの粗忽者。

眠れないわけだけど、薬を飲まないと眠れないというのも困ったもんだ。

それに昼寝をしようと思っても眠れない。

眠くて堪らなくても昼間は眠れない。

ハーブティーでも飲めば、薬に頼らずに眠れるかしら。

ミシンが壊れたと思ったら、今度は給湯のパネルの調子が悪い。

いつの間にか切れている。

お湯が出ると思って蛇口をひねったら、何時までたっても湯が出て
こない。
おかしいと思ってパネルを見たら表示が消えている。

スイッチを入れれば湯が出てきて、使っている間はいいが、使用を
止めるとまた切れる。

修理の電話を入れたら、直っているではないか。

今日修理に来てくれたが、どうも風呂のパネルの方が悪いらしく
また、同じ状態になるといわれた。

「今、部品を持っていますがどうしますか？２万くらいします」
「２万？、ちょっと考えさせてください」
と言ったものの、修理をするのは時間の問題かもしれない。

パソコンも調子が悪く、何時、動かなくなるか分からない。

長男がいればすぐに見てもらえるのだが、日本に居ない。

昨年のガスオーブンに始まって、ポット、ミシン、給湯のパネル
と壊れるときは何でこう、重なるんでしょ。

昨日、夫の姉夫婦が見舞いに来てくれた。

新年会に初めて出席した娘の婿さんの話から、双子ちゃんの
話など、夫に聞かせてくれた。
私たちは、今年は行けなかったから。

元気そうに見えるけど、以前のような会話もできなくなって
来ている。

帰り際、車に乗り込んでから「もう、写真なんかどれにするか
決めた？」ときかれた。

一瞬何のことかと思ったが、すぐ分かった。
「まだ、決めてないけど・・・」
「悪いなんて考えないで、いろいろ準備しといたほうがいいよ」
「はぁ・・・」
「お姉ちゃんの時、ホントに困ったから、早めに決めといたほうが
いいよ」

そんな事言われたって・・・。

その場に立たされた時の自分が見えない。

この頃、一人で買い物に行く車中で、涙がこぼれて仕方ない。
毎日、不安でたまらない。

ミシンが壊れてしまった。

１０年以上前、二男がまだこちらにいるときにプレゼント
してくれたものだ。

縫い物の好きな私の大切なパートナーだった。

２年くらい前から、コンピュータがおかしくなったのか
メモリと縫い目が一致しなくなった。
直線縫いと、ジグザグが縫えれば困らないのでメモリは無視
して、縫い目だけを頼りに縫っていたが、今度は布の送りが
悪くなり、とうとう手で引っ張らなければ同じところで動いたまま
になってしまった。

ミシンも修理に出したことがあるが、メーカーは同じなのに
買ったところでは無いので修理代がすごく高かった。

もう変え時かな。

う～ん、悩むところです。

夫が何時呼ぶのかわからないので、何も出来ないしする気も
起こらない。

居間でだらだらとテレビを見て過ごす。
スターチャンネルとムービープラスで映画を見ることが多い。

特に夜は私の時間だから、ほとんど毎日映画か２時間ドラマ
をみてしまう。

最近みた映画
「スィートノベンバー」「ブロークバックマウンテン」
「フライボーイズ」「ママの遺したラヴソング」
「タイタニック」「恋におちたシェイクスピア」他

「フライボーイズ」のジェームスフランコがちょっと気になる。

他にないかなと探したら「トリスタンとイゾルデ」「スパイダー
マン」に出ていることがわかった。

「トリスタンとイゾルデ」は以前見たことがあるが、そのときは
気にならなかったのに。
今度はちゃんと見よう。

見るなら英語は分からないけど字幕がすき。
吹き替えはどうも自然な感じがしない。
ちょっと間を置くような独特のしゃべり方が好きになれない。

三週間に一度の診察日。

11時40分の予約だが、診察の前にレントゲンを撮るので
介護タクシーに11時に来てもらう。

レントゲンを撮り、内科の受付を済ますと何時ものように
治療室のベッドに寝かせてもらう。

私だけが診察室に呼ばれ、先回撮ったＭＲＩの結果の説明
を受けた。

レントゲンの右胸は真っ白だった。
ＭＲＩの脳の写真も、白いところが増えているし、前の写真と
比べてもすべてが大きくなっているのが良くわかる。
脳の方は確実に悪くなっている。

ただ、頭が痛いとか、気持ち悪いとか苦しいとか言わないので
救われている。

今後気をつけなければいけないのは痙攣、意識障害など。
「何かおかしいと思ったらすぐ病院に来てください」と
言われた。

その後、胸に溜まった水を１Ｌ抜いて貰う。

あの白い右胸を見たとき、愕然とした。

病院で泣くわけにはいかない。

今、涙が後から後からこぼれてくる。

子供たちが帰って静かな家の中にいると、気持ちがど～んと落ち込む。

夫は相変わらず、うとうとと寝てばかり。

涙がひとりでに沸いてくる。

私はもっと強かったはず。

一人でも平気じゃなかったの？

夫が、コーヒーを飲むときのマグカップが陶器製だともう
重くて持てないというので、年末に雑貨屋に行き子供用の
プラスチックのカップを買った。

その時、お店の中でブタのぬいぐるみを発見。
ああ、ブタちゃんが～。

同じ形のブタちゃんは持っているが、それより一回り大きい。
値段もまぁまぁ。

大いに悩んで（？）昨日また雑貨屋に行ってみた。
なければ諦めもつくと思って。

そうしたらいたいた。
早速抱えてレジに並ぶ。
いいばあさんが、大きなブタを抱えていても誰も自分のために
買うなんて思わないだろう。

これは自分へのお年玉！なんちゃって。

新年を迎えたと思ったら、もう今日は4日。

暮れの29日に二男一家が帰省して、31日には長男がベルギーに赴任
していった。

病気の夫と私のことを気遣い、「おかんも、体に気いつけてね」といった
きり涙ぐんでいた。

空港までは二男一家が見送りに行ってくれた。
私はいけなくて良かった。

一人、部屋を片付けながら涙がこぼれて仕方なかった。

1日に娘一家が帰省した。
2日の午後には二男一家が戻っていき、今日娘たちも帰っていった。

またいつもの生活に戻った。
長男が日本に居ないということがこんなに堪えるとは。

夫は特に変わりがないが、昨日、今日はとても静かにうとうとと
寝ている時間が多くなった。

声をかければ返事をするが、それ以外は何も言わない。
側に居てくれとも言わない。

食欲もあったり無かったり。

また今年一年、夫も私も頑張らなければ。